Q、建築士を目指した動機は?
父親が建設業を営んでいたこと、兄が沖縄工業高校に在籍していたなど、現在の仕事につながる環境が身近にあったことが背景にあると思います。その流れで私自身も沖縄工業高校の建築科で学び、自然と建築士への道を進みました。当時は同級生の多くが本土で就職しましたが、私は沖縄に残り小さな設計事務所に勤めることができました。
その後、縁あって県内大手の「国建」に入社する機会に恵まれたことが建築家を目指すうえで大きな転機となりました。会社のある先輩から建築に対する姿勢や技術・手法、考え方などマンツーマンで教えてもらううちにその喜びや楽しさを知ることができました。そういう意味では「国建」の社内環境とその先輩との出会いが本当の意味で建築家へのスタートとなったのだと思います。
Q、設計へのこだわりや心がけていることは?
建築家ならみな同じ答えだと思いますが、「いかに良いものをつくるか」の一点につきます。同じ条件の建物は一つもないわけですから、その土地や周辺環境を踏まえたうえで施主の意向を汲み取り、理想に近づけていく作業は建築家の腕の見せ所であり楽しさでもあります。
独立して今年(2010年現在)で十一年目となり、多くの建物の設計に関わってきましたが、まず念頭におくのは、気候風土を考える中で「光や風をいかに取り入れて快適な生活空間をつくるか」ということです。
施主の住まいに対すルライフスタイルをどのような形、空間で実現させてあげるか。それと私の考えを如何に融合させ快適な住まいを作り上げるかに苦心しますね。
私の場合、一般的な設計に比べて開口部(窓など)が多いと感じます。勿論、その位置、形、バランスは考えますが出来るだけ開けてあげる。施主の方には実際住まわれてみると、「明るくて風通しが良く開放的」と好評を頂いております。
ただし、開口部を広げると同時にプライバシーを確保することも忘れてはならないので、それを両立できるよう外部空間を含めた建物の形、その位置については時間をかけ検討します。沖縄は直射日光にあたるととても暑いのですが、日陰は風が心地よく涼しいので、その特徴も加味しながら採光と日陰のバランスをとることを心がけています。
Q、設計の難しさや楽しさは?
形が良くても住み心地が悪ければ意味がありません。デザイン性と居住性との整合性・バランスが設計の難しいところであると同時にそれを考えるのが楽しいところです。地形、自然環境、土地の広さ、地域性など、あるゆる要素を組み込んで総合的に設計することが求められますので毎日毎晩悩んでいますが、それが楽しい(笑)。私の場合、ネチネチとしつこく考えるのでいくら時間があっても足りません。
設計の依頼を受けて約半年あたりで実施設計を終え工事を発注することが多いのですが、2、3年かける施主の方もいます。時間をかければかけるほどいろんなアイディアとともに要望も出てきますので、理想と現実との狭間で施主へ説明し理解を求めていくことに大変な労力が必要ですが、それも建築家の楽しさと言えるのでしょうね。
Q、施工業者の選定にあたり重視していることは?
建物の規模によって違いますが、基本的にこれまでの長い経験とお付き合いの中から、技術力の高い信頼できる業者を選んで依頼しています。こちらの要望にきちんと応えてくれる施工者でなければいけませんからね。十年程前から住宅性能評価員の資格を得た中で昨年から履行されている瑕疵担保履行法の検査に関わっていますが、そのときに良い仕事をしている施工業者を見つけることがあり、一緒に仕事をする機会を是非作りたいと思っています。
Q、地域活動に積極的だそうですが、仕事とのかかわりは?
建築士は「地域づくり」にもかかわります。居住する地域の自治会長も数年務めましたがその間、公民館の改修、緑化を手がける等地域の環境整備と、周辺まちづくりに関わってきました。
地域の皆さんの意見を集約したり要望を聞いたり、そして行政との交渉、イベントの企画など、建築家の得意とするところですからね。すべてボランティアですが、今後も積極的に仕事での経験を地域活動に生かしたいと思っています。
Q、思い出に残る作品は?
手掛けた作品のすべてに思い入れがありますが、特に印象深いのは旧玉城村に建てたRC造4階建ての住宅ですね。名古屋で長く教鞭をとっていた大学教授ご夫妻が本格的に移住するということで計画されたものですが、土地探しから選定まで最初から関わらせていただきました。
当初は造成地が候補にあがっていましたが、施主と何度も協議を重ね相談した結果、作られた敷地よりも自然な地形で、ありのままの場所がいいと太平洋を望む急傾斜地を選定しました。そこは本人は勿論、周辺住民の皆さんも家を建てれらない土地と考えていたようです。
自然な土地形状を生かせば面白い計画が出来る、たてられますよ言うと施主も賛同し購入することになりました。余計な造成を避け自然な地形を残し計画するといったものの工事そのものが困難な地形でもあり設計には大変苦労しました(笑)。前面道路から3階の玄関にブリッジを通って入る面白い計画となっています。
間取りは1階にセミナールームと図書室、2階には奥様の書斎やゲストルームを兼ねる和室、3階は玄関、居間と食堂に台所、4階は主寝室とご主人の書斎、といった具合。先に述べた開口部の広さ多さが大きな特徴で、南面する部分は全て開口部を設け眺望を楽しむことを考えました。奥武島と太平洋が正面に見えるのですよ。東側にはどの階にも隣地の緑の木々が鮮やかに見える横長の窓を設けたりと、たてものに周辺の豊かな環境を取り込むなどゆったりとした生活が出来るよう工夫しました。1階庭ではご主人が野菜、花を作り自然とのコラボレーションを楽しんでいます。セミナーを企画し、集落に溶け込んで活動するなど生活をエンジョイしている施主に出会えた喜びはいつまでも忘れることが出来ません。




